ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「むぎ」


「っ、な、なに?」


じっと見つめてくる瞳に耐えられなくて、必死に前を向くけれど。


「さわって、いい?」


「っ、なっ……!?」


「朝からずっとさわりたくて我慢してたから、もう限界。な、さわってもいい?」


「っ、そんなこと、いちいち聞かないで……っ」


ふってきた言葉に、ぶわっと体中が熱を持つ。


はずかしいはずかしい……っ。


今からなにをされるのか。

それをまじまじと意識させられるみたいで、ぎゅうっと目をつむる。


「っ、あっ……」


「はぁ……やっとさわれた。
ずっと、ふたりになりたかった」


けれど私に遠慮することなく、耳元で甘く熱い息をはいて。


「なぎ、さ」

「うん?」


ぎゅうっとうしろから、少しの隙間さえ認めないというふうに、今までハグできなかった分を一気にするように。


強く、強く抱きすくめられた。


「っ、あ、」


やばい……。

息を吸い込む度に流れ込んでくるシトラスの香りと渚の熱い体温にクラクラしてくる。


「ふっ、ぅ……なぎ、さ、」


「ん、ちょっと我慢な」


「っ、ひゃあっ、」


「っ……かわいい声。
もっと聞かせて?」


そしてくるっと正面を向けさせられたと思ったら、


「や、やだ、こんなっ、」

「大丈夫。
ぜったい落とさないから」


太もものうしろに手を回されて、グッと持ち上げられて。


「お姫様だっこもいいけど、やっぱこっちがいい」

そう言って私を正面からだっこした。