ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


『じゃあ、今日からふたりでの新婚生活楽しんでね♡』

『渚くん!またいつでも遊びに来てね!』


あれから汐さんたちに送ってもらってすぐに家に帰ったけれど、私の荷物はとっくにまとめられていて。


荷物は任せてってそういうことだったのね……。


そしてまぶしい笑顔の4人に見送られ、今はお互い荷物を片付けているところ。


「渚、なんとか荷物片づきそう?」


「もう終わる。
そんな物ないしな」


「そっか」


「……」

「……」


お、落ちつかない……。


珍しく渚が静かなせいか、変に緊張しちゃうし、本当にふたりきりなんだって、いやでも実感する。


っ、だめだ……。

じっとしてたらもっと無理。

意識しちゃう。


そう思って、息抜きに部屋を探検してみることにした。


本当、改めて見るとすごいお部屋……。


さっきはバタバタしてて気づかなかったけど、キッチンだけじゃなくて、洗濯機や大きいクローゼットまでついてて。


服さえあればふつうに住めるよね……。

それくらい物が充実してる。


「わっ!」


プールまである……!!


ベランダに出てすぐ飛び込んできたのはプライベートプール。

そばにはビーチパラソルと簡易だけどベッドもあるし、周りにはヤシの木みたいなのが立ってたり。


今度水着買いに行こうかな……。


しかも、今は夕方だからライトアップもされてて。


きれい……。


星が輝き始めた藍色とオレンジのグラデーションの空の下、たくさんのビルが立ち並ぶ。


ふだんこんな高いところから夜景を見ることなんてないから、ほうっとしてしまう。


「えっ、もしかしてこれ、露天風呂!?」


それからお風呂場にいってみると、まさかのバラ風呂。


赤、ピンク、白のバラはどれもよくよく見ればハートの形をしていて。


っ、はずかしい……。

これじゃ、ふたりで入ってね、って言ってるようなものだよ……。


「母さんどこまでこだわったんだよ……」

「渚……!」


いつのまに。

すぐうしろで声が聞こえてびくっとする。