「離れるの禁止」
「っ、べつにふつうじゃ、」
「やだ。むぎとの間に距離なんか作りたくない」
渚が直球すぎて困る……!!
どうにか間をとろうとしたら、スっと目を細めた不機嫌な顔が目の前に。
ドキンドキン。
ふいに昨日の夜のことを思い出してしまう。
熱を孕んだ甘い瞳と腰に回った力強い腕。
っ、こんなときになに思い出してるの……っ。
「あたしたちがいるっていうのにヤレヤレ……。
むぎちゃん。こんなケダモノな息子だけど、嫌わないであげてね」
「誰がケダモノだよ」
「僕からも。
渚共々これからも末永く、よろしくお願いします」
「こっ、こちらこそです……!」
ふたり同時に頭を下げられて、私も慌ててそれにならう。
世の中のカップルはこういうときに、息子さん、娘さんをくださいって言うのかな。
でも私はください、じゃなくて。
「渚のことは小さいときからずっと、今も、誰よりも好き、なので……渚を嫌うことは死んでもありえないです」
「っ、むぎ……」
「こんな素敵なプレゼントと、渚と出会わせてくれて、ありがとうございます」
3人に見られているという緊張の中で絞り出した、精いっぱいの言葉。
けれど。
「……」
あれ。私なんか、変なこと言った……?
なにも返答がなくて、ゆっくり頭を上げたら、3人とも目を見開いてこっちを見ていて。
思えば私、めちゃくちゃはずかしいこと言っちゃったような……?
「っ!!」
「むぎ」
「あ、えっと、なぎさ、これはねっ、」
かあっと熱くなる体に慌てれば、泣きそうな、でも愛おしいと言わんばかりに見つめられた。
「俺も、むぎのこと……」
「っもう、むぎちゃん大好き!!
早くお嫁に来てほしい〜!!」
「ううっ、なんていい子なんだ……!」
けれど何かを言いかけた渚を遮るようにふたりが泣き崩れてしまって、渚も私もそれ以上なにも言えず、ますます顔が赤くなるばかりだった。



