ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



それに……。


「ん?」


「っ、なんでもない……」


隣にいる渚をちらりと見て、すぐそっぽを向いた。


さっきからこっち見すぎなんだってば……!


朝もうちを出てからも、ずっと見られている気がする。

昨日の夜とか、今までとはぜんぜん違う。


私を見る目が今までよりも何倍にも甘ったるいというか、熱っぽいっていうか……。


婚約者になったから?

お互いの秘密を打ち明けたから?


もう私たちの間を遮るものはなにもないから?



「っ……」


ほら、今も。


汐さんたちの前だから、さすがにふれてはこないけれど。


さっきの車の中でもここに来てからも。


渚がずっとぴったりくっつくように隣にいるから、

わざとなんじゃって思うほど、何度も手が掠めて。


『早くむぎにふれたい』


伝わる体温がそう言ってるみたいで、その度に体の奥底が甘く疼く。


「一つ、聞きたいんだけど」


「なに?渚」


「ふたりがくっついたらって言ってたけど、別に今までお互いの部屋行き来してし、なんら変わりはないと思うけど」


な?

聞かれてうなずくので精いっぱい。


秘密をすべて打ち明けてしまったせいか、ほんの少しの刺激で反応してしまいそうになる。


私、渚に対して、もっともっと敏感になってる……?


「むぎ?どうかした?」

「っ、なんでもない……っ」


お願いだから、そんなとけた目で見ないで……。