ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「だれ?先輩?」

「も、もうこの話やめない?」


「やめない。
で、誰なの?」


なんでそんなに気になるの……。

しかもなんか近くない?


手がふれそうなほど詰めてくるから、ソーシャルディスタンスを保つのに必死。


「……なんで離れんの」

「なんでって……」


あなたが近づいてくるからですけどっ!?

それにオーラがずっと禍々しくて、びくびくしてるからなの!


ほんと、不機嫌になるところが謎すぎる。


「先輩?年下?」


っ〜、だから!


「まさか俺の知ってるやつ?」


グッと眉を寄せた美形が目の前に。

だから近いんだって!


「いいの?
いろんな人、こっち見てるけど」


いいわけない!

おそるおそる見上げたら、

ああ、これは……。


「ん?」


その後ろに言葉はないけど、絶対、

ん?(答えなきゃわかってるよな)


そう言わんばかりのイジワルな目。


「っ〜、もうっ、言う!
言うから!」


顔が赤くなる前に、離れるに限る。

だって好きな人に顔近づけられて、ふつうでいられるわけないから。


「へえ。
俺のこと、よく分かってんじゃん」

「だてに幼なじみ、17年もやってませんから」


ドキドキさせられたお返し。


可愛げもなく、キッと睨みつけたけれど、


「っ……」


頬を緩ませて、クスクス笑うだけ。


いつもこう。

嬉しすぎるって言ってるみたいな表情に。


私ばっかりキュンとさせられて、心が乱れる。