ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***



「えっと……ここに、プレゼントが?」


「そうなの!」


「ほんと、なにがあるっていうんだよ……」



それから連れてこられた場所は、

首が痛くなるくらい見上げなきゃいけないビルがいくつも並び、人がわんさか歩いている駅前。


「ささっ、着いてきて!」


「な、渚……ここって、」


「ああ。
うちの親が経営してる、ホテル、だけど……」


そう。

今私たちがいるのは駅前の、汐さんたちが社長、副社長を務める大手高級リゾートホテル。


50階を超えるホテルで、客室はもちろん、ロビーも大浴場もプールもレストランもすべてがピカイチ。


聞けば、ホテル業界の中でもトップレベルのサービスは、5つ星らしい……。


一番安いお部屋でも、たしか一泊10万はするはず。


まだ私が幼稚園の頃とか、渚のお母さんたちに誘われて泊まりに行ったことはあったけど……。


あのときはまさか、ウン10万もするお部屋だとは思ってなかった……。


ふつうにベッドの上を飛び跳ねたり、走り回ったり。


そういや、やけにエレベーターに乗ってる時間が長いなーとか、空が近いなーって思ってたっけ……。