ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



イケメンが多いことで有名な水篠が隣にある花柳の女子は、放課後みーんな水篠の校舎の前で待ち伏せ。


先輩から同級生、後輩まで、ありとあらゆる男子に声をかける肉食花柳女子。


「あの……」


特にその中でも。


「久遠、渚くんだよね?
私、花柳3年の……」


「行こ、むぎ」


えっ、いいの!?

花柳と水篠の間にある広場で、いつも待ち合わせをして帰る私たち。

先に渚が待ってくれてることがほとんどなんだけど、いつもうちの女子に囲まれてる。

プレゼントや手紙をもらったり、みんなの前で告白なんかも日常茶飯事。


だけど。


「迷惑なんで」


年下、同い年関係なしに敬語で、

今にも舌打ちしそうなほど顔を歪めて、ぜんぶ断るか、無視する。


いくら騒がれようが、告白されようが、一切応えないのに。


「早く帰ろ。
むぎとの時間、減らしたくない」


「っ……」


幼なじみだからだと自分には言い聞かせてる。

けど私を見る目はいつもあたたかくて、優しい色をして。


「さ、さっき話しかけてきた人、うちで美人で有名な先輩だよ?」


「どーでもいい。
むぎ以外の女なんて視界にも入れたくない」


っ、またそうやって、人をドキドキさせること言う。


小さい頃から一緒にいる女だから。

渚は当たり前のことを言ってるだけなのに。


「つか、さっきの話まだ終わってない。
告白、されたの?」


まだ言ってる……。