ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



深く深く息をはいたかと思ったら。

顔に片手を当てて、一瞬空を仰いだあとで、ガクッとうつむいた。


「どうしたの?
体調、悪いの?」


「悪くない。悪くないし、なんならめちゃくちゃ健康だけど……」


「けど?」


「健康すぎて、泣けてくるって話」


「?」


え。なに?

健康なのに、泣く??


どういうこと?


「俺の……というか、男の問題だから」


「ああ、うん?
わかっ、た……?」


「ん、だから大丈夫。
気にすんなよ」


優しく笑って、ふわふわと頭をなでてくれる手に、胸がぎゅっとなる。


「……じゃあ、最後にもう一つ」


「うん」


「その症状が特に目立つのって、俺がさわるとき、なんだよな……?」


「うん……」


だから私は、たとえ両思いで付き合えたとしても、お互いふれ合えないのはつらくなるかもって思って、告白しないって決めてた。


「森山とか、他の女子とかじゃなくて、
ほんとに俺が一番?」


「うん……」


「ほんとにほんと?」


「うん、そうだよ」


よくよく考えてみると、好きな人にだけ異様に敏感になるって、めちゃくちゃいやらしい女みたいではずかしい……。


そう思って、ゆっくりゆっくり渚を見たら、


「そっか……俺が、むぎの一番…」