ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「俺のことは?」


「……き」


「んー?
もう一回」


「っ、絶対聞こえた!」


「んー、俺、耳遠いからさ。
お願い、むぎ」


っ、うそばっかり!

その頬の緩みが抑えれてない顔、聞こえてないはずないのに!


だいたいこの距離なんだから聞こえるはずでしょ!?


「な、聞かせて」


「っ、す、き……」


「ん、俺も好きだよ」


今度は聞こえるか聞こえないか。

それくらいの声量だったのに、渚は。


「ほんと俺、今一生分の幸せ感じてる。
むぎと両思いになれて、婚約者になれて」


「そ、そう」


「なにその、かわいいの。
ツンツンしてるつもりかもだけど、めちゃくちゃ嬉しそうなの隠せてないよ?」


「っ……」



「ね、なんでそんなかわいいの?むぎも俺と同じくらい、嬉しいって思ってくれてるって思っていい?」


顔を傾けて、優しい声で、優しい目が見つめてくるから。


「うん……」


素直にうなずくしかできなくて。


「むぎ」


「なに……っ、んっ!?」


瞬間。