なにやらとんでもないことを言われたあと。
「むぎ。
顔、あげて」
「い、いや」
「なんで」
「だって今、変な顔してる」
部屋の甘ったるさと、渚からぶつけられる熱量に耐えられなくて、いいかげんはずかしくてうつむいてしまった。
でも渚は優しい声で私を呼ぶから。
「照れてんのも、はずかしがってんのも、めちゃくちゃかわいいよ。そもそもそうなったのは俺のせいなんだし?」
「ううっ……」
「顔みたい、むぎ。
俺のこと、嫌い?」
「っ、きらいじゃな……」
「じゃあ、俺の顔見て言って。
むぎと婚約者になれたこと、実感したい」
心の底からお願いって言ってるみたいな渚の声。
ずるい……。
「ふっ、やっと顔、あげてくれた」
そんなの、応えるしかできなくなる。



