ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



それから。


「うっわ、ぶかぶか!
これがいわゆる彼シャツか!」

「なに興奮してんの」


それから場所を移動して、ここは水篠の男子トイレ。

「ほんとに入っちゃって大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫!
ここ、すぐ外につながってるとこだから、万が一見られても安心安心!」


なにが安心かは分からないけれど、まあ土方くんがそう言うならってことで、納得した。


「ネクタイも締めたし、あとは……」


そう言って土方くんが次にカバンから出したものは。

「それ、ウイッグ?」


「そう!これ被るだけで1発で誰でも男子高生になれるってやつ!」


「土方くん、なんでそんなもの持ってるの?」


「ああ、これは前に那咲とそういうプレ……ぐはっ!」


「土方くん!?」


今日で2回目。

すばらしいほどの那咲の回し蹴り。


「なにも気にしなくていいからね、むぎ!
ほら、むぎのこと久遠のいるとこまで早く連れていきなさいよ」

「しょ、承知しました……」