ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「ほら、碧。
むぎに渡すものあるんでしょ」


「そ、そうでした」


渡したいもの?

土方くんが?私に?


首をかしげてたら、ゴソゴソと土方くんのカバンから出てきたそれは。


「水篠の、制服……?」


淡い白のカッターシャツに、赤チェックのネクタイ。ダークグレーのズボン。


「これ……」


一瞬ふわっと鼻をくすぐったその香りに気づいた私はやっぱり末期だと思う。


「これ、渚の……?」


「お、よくわかったな?」


ニッと笑う土方くんに、ぼぼぼっと顔が熱くなる私。


「ちょっと?
むぎのこと、からかわないの」


「いやー、期待以上の反応してくれるから、ついな」


苦笑いの土方くんに、私はハッとする。


「えっと、これ、持ってきちゃっていいの?」



今は練習中だろうから、いらないけど、帰るときはいるよね?


水篠もうちも、部活のユニフォームとかジャージで帰るのは禁止されてて、いくら暑くても制服で帰るように言われてる。


「うん。だから星見、これ渚に返してきてよ」


「はっ!?」


えっ、どういうこと!?


ていうか……。


「いくら体育館とはいえ、私、入れないよ?」


合同行事は3学年とも終わっちゃったし、昼休みの行き来もなくなっちゃったし。


「うん。だから、これ着て、渚驚かせようぜ☆」

「えっ……ええっ!?」


「星見も渚に会いたいだろうし?
がんばってる渚にサプライズしてやって!」