ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



今は放課後。

水篠の校舎。

体育館が見えたとたん、あそこで渚が……なんて思うと、渚のことを考えるたびに、今朝見た夢のことを思い出してしまう。


私、こんなやらしい女だったっけ……?


渚が足りなくてとうとうこんな夢まで見るなんて、ほんと末期すぎる。


「おーい!那咲!」

「碧」


「土方くん!」


一緒には帰れないことを心配した渚が、土方くんに私を送るように頼んだらしくて、最近は那咲と3人で帰ってる。


「土方くん、さすがにもういいよ?
那咲とのふたりの時間、奪うの本当に申し訳ないし……」


「いいんだって!
てか、万が一にも星見になんかあったときの渚が怖すぎるから、むしろ一緒に帰ってくれたほうが助かります」


「そ、そう?
なら、いいんだけど……」


せっかくお付き合いしてるふたり。

そのふたりと一緒にいる私はどう見ても邪魔者としか思えない。

そもそも学校がちがうから、いっしょにいる時間は限られてるし……。


「ほんとに気にしなくていいから、星見!
だって、休みの日、那咲とは一日中ホテ……ぐはっ!」


「土方くん!?」


那咲の鋭い蹴りが土方くんの、みぞおちに。


「だ、大丈夫?」

「こんなのどうしたってことないよ、むぎ!
へいきへいき!」

「そ、そう?」


なんか、那咲の土方くんに対する扱いが日に日に雑になってるような……。


照れ屋さんだもんね、那咲は。