ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「俺と結婚して。
結婚したい。これから彼氏彼女としてはじめるけど、むぎからの気持ち聞いて、もう我慢できない。むぎの心も体も未来も、その先も、ぜんぶほしい。むぎからの愛がもっとほしい」


「っ……」


「重いこと言ってるのはわかってる。
まだ付き合ったばっかで、困らせるのもわかってる。でも俺はむぎを好きだって自覚した瞬間から、今までずっと、こうなることを望んでた」


「なぎ、さ」


「むぎを幸せにできるのは俺だけ。
むぎと、一生いっしょにいたい」


口元を覆っていた手はいつの間にか。



「っ……!」



そっと持ち上げられた左手の薬指にキスを落として。



「指輪もないし、かっこつかないけど……。
────俺と結婚してください」




***



「それで?」


「え?」


「もちろん、OKしたんでしょうね!?
てか、受ける以外選択肢にないはずよね!?」


「ちょっ、ちょっと落ちついてよ那咲!」


そして話は那咲との会話に戻る。


私が一方的に好きなだけで、両思いなんて夢のまた夢だとずっと思ってた。

でも大好きな人と付き合うことになって、そして。


少し緊張した面持ちで、ほんのり耳を赤くして。


あの渚が。

クールで無表情で、冷たいと言われてる渚が。


私を好きでいてくれただけじゃなくて、いつもの調子が崩れるくらいにがんばってプロポーズまでしてくれるなんて。


そんなの。


そんなの……っ。



「私、も……」


「え……?」


「私も渚を幸せにしたい、から……」


「から……?」


渚の瞳が大きく見開いて、そして。


「渚を幸せにできるように、がんばる、から。
結婚、したい、」


「誰と?」


「渚と……っ」


「っ、むぎ、」