ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


ふわふわ心地いい、わたあめみたいな、夢。


前にも見たことのある幸せな夢だった。


私の頬を愛おしいと言わんばかりになぞって、好きだよって、とけそうなほど優しい声で囁いてくれて。


その大好きな体温で、ぎゅっと強く、抱きしめてくれて。


「ん……」


ふっと目が覚めたとき。


「むぎっ!!」

「那、咲……?」


「よかった……っ、目、覚めて」


目を開けたとたんに飛び込んできたのは、今にも泣きそうな顔で私を見つめる那咲の顔で。


「むぎちゃん!」

「星見!」


よかった!そう言って私の顔をのぞきんできたのは同じグループのみんなだった。


「ここ、は……」


「あたしたちの、女子の部屋だよ」


「あれ、私……」


「覚えてない?
むぎと朝日くんがなかなか戻ってこなくて、みんなで心配してたら、急にひどい雷雨になって、しかも停電までして。どうしようってなってたら、久遠が脇目も振らず、1人で校舎に……」


そうだ、あのとき。


「渚……、渚はっ……」


「むぎ」


「渚……!」


みんなのあとに続くように入ってきた渚は、私が腕を伸ばす前に、ぎゅっと強く私を抱きすくめて。


「よかった……よかった、目、覚めて、」


「渚……」


泣きそうな。

どこか震える声に、また心配をかけてしまったって、心臓がぎゅっと苦しくなる。


「お邪魔みたいだし、オレたちは出とくか」

「バカ碧!そういうこといちいち言わなくていい!」

「むぎちゃん、またあとで戻ってくるから。
それまで久遠くんとゆっくりしててね」


「星見さん、お大事に」


「ありがとう、みんな……」


パタンと閉まったドアを見つめてたら、


「むぎ」


「ん……っ、ふぁ、」


ぎゅっと体は引き寄せられたまま、甘くて優しい、ふれるだけのキスが何度も唇に落ちてきた。