ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「さっき、泣きそうになってたよね」

「え……」


「久遠に、頭ポンポンされてるとき」


「また、見てたの……?」


「見てるよ。今もずっと、」


「え……」


少し進んで振り返った朝日くん。
その目はあのときの、水場で見たときと同じ目をしていて。


「は、早く行こう……みんな、待ってる」

「うん……」


気づいているのに、気づいていないフリをする。

見て見ぬふりをする。


なんて最低なんだろう、私。


渚のことも、朝日くんのことも。

もう、頭がぐちゃぐちゃで。


自分が嫌で嫌でたまらなくて。

また、泣きたくなった。