ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「花岡さん。
俺がいるから安心してね」

「はうっ!鳳くん……!」


そしていよいよ、私たちのグループの番がやってきた。


「ほら、行くよ!土方くん!」

「うわあああ!那咲あああ!」


なかば引きずられるようにして、校舎内に入っていく音ちゃんと土方くん。


「久遠。あたしたちも行こう」


それから土方くんたちが見えなくなってすぐ、渚たちも出発した。

そして。


「じゃあ、最後!
朝日くんと星見さんね!いってらっしゃい!」


生徒会メンバーに見送られて、ふたり並んで校舎に入る。


「思っていた以上に暗いね……」

「う、うん……」


さすがにところどころに電気はついているけれど、廃校舎ってだけあって微々たるもんだし、なにより雨の音が相まって、本当にホラー映画の仲の校舎みたい。


これ、は……。

予想以上かも……。


「っ……」

「むぎさん?」


足が、手が、震える……。

昔のトラウマが蘇ってくる。


どうしよう、早く行かなきゃ。

みんな待ってる。

私たちが最後なんだよ。


朝日くんも困るのに、こんなところで立ち止まってたら……。


「むぎさん」

「っ、えっ……?」


優しい声のあと。

そっと腕を掴まれたと思ったら、ちょんと朝日くんのジャージの袖を握らされた。


「手……は、さすがにつなげない、から。
これでも、いい?」

「う、ん……」


つなげない。

それにはどんな意味が含まれてるのか。

私が渚と付き合ってるから。

それとも私の体質のことを知ってるから。

朝日くんには私の体質が変わったことは言ってないから、きっと後者。


でも……。