ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「むぎ!むぎ!」

「那咲」


「あたし久遠とだし、こっそり代わる?
べつにペアが変わることくらい、どうってことないし」

「ううん……へいき、だから」


私が怖いのが苦手なのを覚えているのかはわからないけど……なにも言ってこないってことは、きっとそういうことなんだと思う。


なによりも、いっしょに回りたくない、なんて拒絶反応されたらって思うと、怖くて言えなくて。


「でも、順番で行くと、むぎたち本当に最後じゃん?本当に大丈夫?」


鳳くん、香澄ちゃんが1番。

土方くん、音ちゃんが2番。

渚、那咲が3番。


そして、朝日くん、私が4番。


「うん、大丈夫、だよ……」


那咲にはこのキャンプでいっぱい心配かけたし、これ以上那咲のキャンプの思い出をそんな思いだけで終わらせたくないから。


「ほんとに?
もし本当に無理になったら、ちゃんと言うのよ?」


「うん……」


「あー、怖かった!」

「廊下ところどころ電気ついてるけどめちゃくちゃ不気味だったんだけど!」


さっき行った1組目がもう戻ってきて、女の子のほうは仲のいい子に、泣きそうな顔で怖かったー!って抱きついてる。


「ぶ、不気味……」

「大丈夫だよ、土方くん!
あたしがいるんだし!那咲、土方くんのことはあたしに任せて!」

「音、任せたわ」


「……」


そんな那咲の隣でずっと無言の渚。


今、なにを考えてるの……?

謝りたい。

ごめんなさいって言いたい。


けど、それさえも渚に拒否されたらって思うとどんなものよりも怖くて。


「次、2組行きまーす!」

「えっ、もう!」


私たちの順番が回ってくるまで、話しかけることはできなかった。