ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



なんだか気まずくてふたり黙ったまま、作業を続けてたら、朝日くんがポツリと言った。


「……ケンカ、したの?」


「え?」


「久遠と」


「どう、して……?」


「好き好きオーラすごいあの久遠が、むぎさんのそばにいないなんて、珍しいなって思って」


「そう、かな……」


「うん……ふつうに話してるし、パッと見わかんないけど、」


「うん」


「見てたから」


「え?」


「むぎさんのこと」


「っ……」


見られてる。

キュッと水を止めた朝日くんの視線が、隣にいる私へ注がれてる気がする。


「……」

「……」


「戻ろうか」

「うん……」


それ以上朝日くんがなにか言ってくることはなかったけれど、

私の頭の中には朝日くんの言葉だけがずっとこだましていた。