ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



いつの間に……。

ざるからじゃがいもをとって、そのまま私の隣で洗い始める朝日くん。


「花岡さんと寺島さんが野菜切るの手間取ってるみたいで、森山さんにこっち、任された」


「そう、だったんだ……」


ふっと顔を上げて周りを見れば、

私の周りにいた人はみんな、もうとっくに作業場のほうに行っていて。


ここには朝日くんと私しかいなかった。


「この間は、ありがとう」

「え?」


「体調不良のこと」

「ああ、いや、ぜんぜん……体調回復したみたいでよかった。香澄ちゃんとも、和解できたみたいだし」


「うん。今朝花岡さんに謝られたよ」


そう言う朝日くんの隣で、水が目に飛んだフリをして、慌てて涙をグッと拭う。

泣いてたの、バレてないよね……?


「でも女の子に怒られたの、はじめてでちょっとびっくりしたけど」


「そっ、それは忘れて……」


「やだ、忘れない」


「ど、どうして、」


「みんな俺のこと外見だけしか見ないけど、むぎさんはちゃんと正面から言ってくれて」


うれしかった。


それが妙にはっきり聞こえた気がして横を見れば、いつの間にか隣の水道はとまっていて。


「本当に、うれしかった」


ふっと顔を上げれば、とんでもなく優しい目で私を見下ろす朝日くんがいて。

これ、は……。


「っ……」


穏やかな瞳から感じたそれから目を背けるように、バッとうつむいて野菜を洗い続ける。

今、ぜったい挙動不審だったよね……?