ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「むぎ」


「っ、え?」


「暑いし、体調わるくなったら遠慮しないで言って」

「う、うん……」


「やっさしー彼氏ですねえ!
その優しさ、もうちょっとオレにも向けてくれても良くない??」

「悪いけど、むぎ限定だから死んでも出さない。つか、男相手になんで優しくしなきゃなんねーの」


「かぁ〜!手厳しー!」


いつも通り振舞ってるつもり。

でも、その手が私に伸ばされることはなくて。


「むぎ……」

「大丈夫だよ、那咲」


先日のことを話してある那咲は、渚と私が会話をするたびに、つらそうな顔をする。

そんな顔、私のせいでしてほしくないのに。


「土方くんと付き合い初めての、せっかくの行事なんだし、私のことは気にしなくていいんだよ」


聞けばこの間、たまたまふたりで帰ったとき、土方くんから告白されて、付き合いはじめたらしくて。


『ずっと友達としてしか見てなかったけど、小学校のときからって聞いて、そんなに想ってくれてたんだってびっくりして』


『うん』


『めちゃくちゃ顔真っ赤にして、声も震えてて。ふだんずっと笑ってるイメージしかない土方のそんな姿、見たことなくて、ちょっとグッときたというか、余興の練習でもドキドキしちゃったというか、』


『うん』


『それでね、やっと自分の気持ちに気づいたの』