ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


「じゃあ、一旦ここで休憩します!
水分補給しっかり行ってくださいね!」


あれから2日後の今日、キャンプ当日。

今は最初のプログラムである、バイキングの途中。


雲一つない快晴の今日は、とっておきのキャンプ日和なのに。


「むぎ、平気?」

「うん、大丈夫だよ」


その平気、は、きっと渚のことを言ってるんだと思う。

私の心はずっと曇っていた。


「あーっ、疲れた……これ、まだ続くの?
オレもう歩けない……渚おぶって」

「ぜってーやだ」


あれから渚とは微妙に距離が空いてしまった。


『怖がらせて、ごめんな』


最後にもう一度、そう囁いた渚は、私の制服を直したあと。


『帰ろう』


それだけ言って、なんであんなことをしたのか、どうしてあんなことを言ったのか、話しては、くれなかった。


余裕がないって?

ごめんって?


おはよう、おやすみ、ただいま、おかえり。


今日のごはん何にする?

今日学校でね?


目を合わせて、いつも通り、たわいもない話をする私たち。

けどそこには。


『お、おかえり、渚』

『ん、ただいま』


『なんか疲れた顔してる。
今日は早く寝よう』


身体的接触は、ない。


渚が、私にふれてくることが、なくなってしまった。