ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



ヒートアップした花岡さんの声を、慌てて制したのは。


「朝日くん、ちょっとごめん」


そう言って。


「っ!!」


信じられなかった。


「やっぱり、朝日くん、熱ある。
それもすごい熱」


なんの戸惑いも、躊躇もなく、むぎが、朝日の手に、ふれた。


「え、うそ……」

「うっわ、まじだ!
と、とりあえず保健室!」


「オレ、ちょっと職員室行って先生のとこ行ってくる!渚!あと任せた!」


「……ああ、」


目の前の光景がただただ信じられなくて。

なんとか絞り出した声は掠れて、碧に届いたかどうかわからなかった。


「ご、ごめん、朝日く……あたし、」


「香澄ちゃん、保健室行って、氷とか用意してくれる?謝るのはそのあと!」


「う、うんっ」


「立てる?朝日くん」

「……っ、ごめ、きつい、かも、」


「だよね、なら、私の肩に腕まわして、」


その言葉を聞いた瞬間。

俺は弾けるように、むぎを朝日から離して、代わりにその熱い腕を自分の肩に回させる。


「むぎは寺島さんと保健室行って、朝日休ませる準備しといて。森山は花岡さんのフォロー」


「わ、わかった」

「分かったわ」


「鳳は、朝日の荷物まとめといて」

「了解」


バタバタとみんなが慌ただしく出ていって、教室には朝日と俺だけになって。


教室には朝日の苦しそうな荒い息だけがときどき聞こえるだけ。


「……」

「……」


「……ごめん、久遠」


その言葉に、ちゃんと返せた記憶は、ない。