「んー、オレはそうは思わないけどなぁ」


「なにが?」


その言葉に、のそっと体を起こして碧を見れば、いつものおちゃらけた姿はなくて、


「最後まで星見の力になったのは渚だろ」


ただ真剣な顔で俺を見ていた。


「たしかに、他に理解者が現れたことは、星見にとっては大きかったかもしれない」


「……」


「けど、それまで星見を支えてたのは渚だろ」


「……」


「ずっとそばにいたのは渚だし、ずっと星見を見てたからこそ、赤の他人にはない、絶対的な信頼があるから、星見も渚にぜんぶを打ち明けて、ぜんぶを見せてる」


「ふたりが付き合うようになったから、星見は自分と向き合って、あの体質を受け入れようとがんばってた。紛れもなく、それは渚がきっかけだろ」


「……」


「渚にとって星見が必要不可欠なように、星見にとっても渚は必要不可欠なんだよ。ふたりが幼なじみのときからそういう風にできてるし、成り立ってる。そばで見てたオレが言うんだから、そういうことだよ」


森山もきっと同じこと言うと思う。


「碧……」


「つーか、元気ない渚とか気持ち悪い。
いつもみたくオレを罵倒しろよ!」


ほら!オレを存分に罵れ!

なんて。


ニカッと笑って親指を突き出す碧。


「そうだな……」



碧の言葉に、少し気持ちが楽になった気がする。



「ほんと、碧には助けてもらってばっかだよ」



前に森山が言ってこと、今ならまじで思う。

こんないいやつなら、ぜったい好きになるって。


「えっ、なに急に……え、まさか渚……すまん、オレには森山という心に決めた人がいるから」


「気持ちわるいこと言うな、バカ」


えー?だってさあ!


なんて、またいつも通り話し出す碧に、もう一度、心の中で言う。

ありがとうな、碧。

ほんと、感謝してる。



「あ〜!やっといつもの渚に戻ってきた!
オレを罵倒しない渚とか、気持ちわるくてまじで鳥肌だし!」


「まだ言うか」


「それにさ、今日は放課後グループで集まりあるんだし、渚にもしっかりしてもらわないと困るんだよ!」


「ああ、あの余興のやつ……」