あの日。

ダンス練習の途中、朝日の体調が悪くなって、むぎが保健室に連れていったあのとき。


『実は朝日くんが……』


家に帰ってからぜんぶ聞いた。


むぎの体質に気づいて授業を抜けたことも。

あの噂のことも。


朝日がなにを言ったかまでは、詳しくは聞いてない。


けどもしかしたら。


「むぎが克服できたのは、朝日のおかげかもしんないんだよ……」


一日目のダンス練習の夜、むぎにキスしたとき、もう症状は出てなかった。


たまたまだったのか、本当に克服できていたからか。

今となってはもうわかんないけど……。


朝日の件があった日の夜以降から、はや2週間。

症状が出ることは、もう一度もなかった。


だから、もしかしたら、完全に克服できたのは、身近に同じ体質を持った人がいる、それを理解してる、朝日がきっかけだったかもしんないって。


「でも、渚もいろいろがんばってたんだろ?」


「そうだな……」


ほとんど症状が出なくなるまでに変わったのは、たしかに特訓のおかげかもしれない。


でもずっとそばにいた俺じゃなくて、最後にむぎの背中を押したのはあいつの一言で、


最終的に、むぎを変えたのは朝日かも、なんて。