「せっかくイチャイチャできると思ったら、それは災難だったな」
「めちゃくちゃ他人事みたいに言ってるけど、いつもテスト直前になって俺に泣きついてくんの、どこのだれだよ」
「オレです……」
でもテスト終わればイチャイチャできるじゃん!
やっと克服できたんだからさ!
いいなぁ、なんてうらやましいと言わんばかりの碧。
そう。やっと。
大好きな彼女がずっと苦しんで、抱え込んできたものをやっと克服できた。
性別関係なく、俺にふれられるのが一番症状が大きくなるむぎの体質。
でもそれがなくなった今、彼女に思う存分にふれることができるし、彼女がもう二度と同じ悩みで悲しむことがなくなる。
むぎも俺も、心の底からずっとそれを望んで毎日を過ごしてきた。
泣きそうなほどうれしい。
むぎも俺も幸せ。
そう、思うのに。
「渚は……星見が体質克服したこと、あんまり、うれしそうじゃないな?」
「……」
髪をぐしゃぐしゃして、ため息をつく。
気持ちが浮かないのは、彼女との時間がとれないことだけじゃない。
自分の、醜い嫉妬のせいが一番だ。