【渚side】


「あー……さわりてえ」

「なにに、とか聞くまでもないやつな」


授業終わりの休み時間。

机に突っ伏して、隣の花柳の校舎を見つめる。


「やっっっと克服できたんだろ?
だったらいろいろ、やり……イチャイチャし放題なんじゃねーの?」


「今なに言いかけた?」


めちゃめちゃ最低なこと言おうとしなかったか、こいつ。


「きっ、気のせいじゃね!?
で!?実際どうなんだよ!?」


「まあ、そうだけど。けど明日……明後日のキャンプ前に小テストあるじゃん」


花柳じゃなくて、水篠が。


中間とか期末もそうだけど、成績にめちゃくちゃ響くテストだから、復習は必須。


だから、むぎの症状がなくなってからの毎日は勉強しかしてない。


けど、テスト範囲の勉強はとっくに終わらせてるし、わかんないとこもないから、正直勉強しなくてもいい。


『いくら小テストとはいえ、大事なテストなんだし、気は抜いちゃだめだよ』


なんて、いくら大丈夫って言っても、私が不安だからって、何度も言い聞かされて。

むぎが俺のために、俺を思って言ってくれてる。

自分が思っている以上に彼女は自分のことを愛してくれてる。


そう思ったら。



『わかったよ……』


ふだんツンツンな彼女のデレに弱い俺は、もちろんうなずくしかできなくて。


真面目なとこ、ほんとにいいと思うし好きだけど。


「死ぬ……」


正直、むぎとの時間がなさすぎて窒息する。

むぎ不足で、まじで頭狂いそう……。