す、すごい声……。
そんな変な声出してたっけ……。
「自販で会ったときも」
「うん」
「お金拾っときも、同じような反応してて、」
「うん」
「決定打は、さっきのダンスのときかな」
「ダンスのとき?」
「うん。土方と、手つないでなかったし、久遠もむぎさんの手元めちゃくちゃ気にしてたっぽいし、もしかしたらって」
「……」
朝日くんて、こんな人だったの……?
こんな、周りが見えてる人、だったなんて。
見た感じ、無気力そうというか、なんでもいい、みたいな感じの雰囲気だから、
いくら女の子に優しいとはいえ、てっきり周りのこともそういう目で見てるのかと思ってた。
「身近に同じ体質の人がいるから、そう思えたのかも」
「身近に?」
「姉が、その体質なんだよね」
「お姉さん?」
「うん。4人いるうちの1人」
「お姉さんが4人!?
えっ、じゃあ、朝日くんて、」
「5人兄妹の末っ子。兄妹で男なの、おれ1人」
い、意外すぎる……朝日くん、てっきり一人っ子かと思ってたけど、まさかお姉さんが4人もって!!
「その体質のこともあって、昔から女の子には優しくしろ、困ってたら助けるのが男だって、散々言われて育ってきて」
苦労した……なんて、ため息をつく朝日くん。
あ、だから……。
「女の子に優しいって、そういうことだったの?」
女の子には優しいって有名な朝日くん。
でも女の子泣かせって……。
「女の子に優しくしたはいいけど、人の名前と顔覚えられないのは本当で、本当にごめんって言ったら泣かれて、の繰り返しで」
「う、うん……」
「じゃあ優しくしなきゃいいのにって思うかもしれないけど、あの4人の怒った顔思い出して、どうしてもできなくて」
なんて、苦い顔をする朝日くん。
つまり、あのウワサは、
女の子泣かせなのは、本当に人を覚えるのが苦手だから。
女遊びをしたとか、不特定多数の子とそういう関係を持ってるとか、そういうことじゃなくて。
「ふふふっ、」
「え……」
「やっぱり、朝日くんは朝日くんだった」
「え?」
「ありがとう、朝日くん」
いくらダンスが得意とはいえ、私に気を使ってわざわざ体育を抜けてくれたことも。
私の体質に気づいて、瞬時にタオルを巻いて私に直接さわらないようにしてくれたことも。
ぜんぶ、ぜんぶ、
その優しさはお姉さん譲りの純粋なものだから。
「助けてくれて、話してくれて、ありがとう、朝日くん」
「っ……」



