ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「ごめん、おれ……べつに体調わるくない」

「え?」


「ふつーに元気」


「えっ……ええっ!?」


元気っ!?今っ!?

現在進行形で!?


「えっ、えっ、でも、顔色あんまり良くない……」


「低血圧だからいつもこんな感じ。体調わるく見られがちだけど、バリバリ元気だし」


「そ、そうなんだ……じゃあ、どうして、」


「ダンス、覚えたし」


「えっ!?」


「昨日も言ったかもだけど、おれ、昔ちょっとだけダンス習ってたことあって、得意なんだよね、覚えるの。だいたい1回やれば覚えられる」


昨日のやって、もう覚えた。


「じゃ、じゃあ今もダンス部なの?」


「いや、バスケ部」


「バスケ部!?」


イメージが、なさすぎる……。

なんというギャップ。


「そう。友達に助っ人で頼まれて、試合出たら思いのほかうまくできて、で、ハマっちゃって。入部決めた」

「そ、そうなんだ……」


ダンスにバスケ。

だるいとか言ってそうなのに、バリバリ運動系……。

人は見かけによらないって言うけど、こういうことを言うんだなぁ。


なんて能天気なことを考えて、ふと気づいた。


「え、でも、どうしてあんな途中のタイミングで?今日はグループ練習だって昨日も言ってたし、それなら最初から……」


「……」


また、黙っちゃった……。


たしか、さっき朝日くんが体調わるいって言い出す直前、ペアが変わったよね。


順番でいくと、音ちゃん、那咲、そして、私……。


プラス、朝日くんの手に握られてるタオル。


「……」

「……」


ふと思い立った一つの可能性。


まさか、まさかだけど……。


「もしかして、朝日くん……」


「おれが抜ければ、おれの代わりに、そっちの女の先生が代わりに入ってくれると思って」