ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「保健室、こっちだよ」

「……」


ずっと無言のまま、私のうしろをついてくる朝日くん。

なにも話さない……。

体調、相当わるいのかな……。


笑ってる姿とか見たことないし、いつも無表情だからなんとも言えないけど、なんとなく、顔色もわるいような気がする。


体育館を出て、玄関を通り過ぎてそのまままっすぐ。

保健室はこの角を曲がってすぐだ。


「むぎさん」


「えっ、なっ、なに?」


「おれ、水篠の保健室行くからいいよ」


「え、でも……」


「おれ寝てたら、来た人、びっくりするだろうし……」


びっくり。


ああ、そっか。


朝日くんが言いたいのは、たぶん、こういうこと。


ここは女子校だし、寝ていたとして、万が一他の学年の子が来たらなんでここに男子がいるのかって、びっくりするかもしれないってこと。


「じゃあ、水篠のほう行こうか。
私、玄関までだけど、ついていくよ」


私が水篠にいても、びっくりされるのは同じだろうだから、玄関までだけど。


「いいよ、ここまでで。じゃあ……」


「あっ……」


私の横を通りすぎるときの朝日くんは、やっぱり顔色が良くない気がして。


「待って、朝日く……わあっ!?」

「っ!?」


グッとその体操服を握ろうとして、情けなくも段差に躓く私。


「っ……ぅ、いった……く、な、い?」

「大丈夫?」


「あっ、朝日くん……!」