ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「じゃあ、お願いね」

「は……」


ぎゅっ。


先生の言葉にうなずこうとした瞬間。


そっと私の手を引いたのは。


『大丈夫か』


1人で行かせるの、心配。

そう言わんばかりに目尻を下げる渚だった。


『大丈夫だよ。
いってくるね』


『気をつけてな』


『うん』


お互い声には出さないまま、目だけで会話する。


「保健室、連れていくね」

「うん……」


そっと離された手を名残惜しいと思いながら背を向ける。


今は私の体質云々よりも、朝日くんの体調のことが第一優先だから。


ここは花柳で、水篠の朝日くんがうちの保健室の場所なんてわかりっこない。


とにかく朝日くんを連れていかなきゃいけない。