ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「っ〜、むぎっ……!」


「ひゃっ、ちょっ、渚!?」


「やっと、やっと俺のになった。
やっとむぎの気持ち聞けた」


言った瞬間、ガバッと抱きつかれて、強く強く抱きすくめられる。


一瞬見えた顔は今まで見てきたどんな顔よりも嬉しそうで、幸せそうで、キュンとする。


「ごめん。
さっきちょっとかっこつけた」


「え?」


「むぎの気持ち知ってたとかうそ。ほんとは、なんとなく両思いかもって思ってただけ」


「そうなの……?」


「ん。もっと早く気持ち伝えようと思ってたけど、もしむぎが俺をそういう風に見てなかったらって、嫌われたらって言えなかった」


私と、同じ……。


「だから幼なじみとしてそばにいるしかできなかった。でも、むぎの気持ち聞いてやっと好きだって伝えられた」


ゆっくり体を離されて、のぞきこんできた瞳は嬉しさと、でもどこか泣きそうで。


……渚のこんな顔、はじめて見た。



いつもクールで飄々としているけれど、今それを乱しているのは紛れもなく自分で。


こんなに嬉しいことなんか、ない。


だから……。


「わ、私も……」


「うん?」


「いつも、渚が告白される度にモヤモヤしてた」


はずかしいとか、そんなのぜんぶなくなって。


「渚は私の幼なじみなのにって、一番近くにいるのは私なのにって、ずっと思ってた……」



意地っ張りで、なかなか素直になれない私だけど、他の子に嫉妬ばかりしちゃうくらい、渚が好きなんだよって伝えたくて。