ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



一つ心残りとしては、朝日くん。

とにかく、なるべく関わらないように……。


そう思っていた直後だった。


「あ、むぎさんもいっしょなんだ」

「!☆?▲」


開始10秒。

無理だった。


「えっ、今、むぎさんって言った?」

「なんで下の名前呼び!?」

「むぎちゃん、どういうこと!?」


「えっ、朝日いつの間に……」


那咲、音ちゃん、香澄ちゃん、土方くん。

みんなそれぞれ驚いてる。


当たり前だ。

なんの接点もないはずの私たち。


ついこの間ショッピングモールで会ったとき、那咲と土方くんはいたけれど、名前までは呼ばれてない。

それに、私は渚と付き合ってて、謎にそれは有名な話。


なのにあの女の子泣かせで有名らしい(?)、人の顔と名前を覚えるのが苦手な朝日くんが、私の名前を、しかも下の名前で呼んだから。


「あ、あの、朝日くん……」

「朝……」


「あ、久遠も同じなんだ。よろしく」


「え……うん」


渚ああああ!

あの渚が動揺してる!


今私と、かぶった声は、きっと渚。

たぶん、呼び方についてなにか言おうと思ったみたいだけど、その渚がぽかんとするくらい。


え、この空気で?

渚に話しかけるの?


「「「「……」」」」


そんな、みんなの心の声が聞こえてくる。