ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



瞬間。


胸がぎゅううってなった。


「ふっ……」


いろんな気持ちに耐えきれなくて落ちた涙に、渚はますます優しく笑って。


「なんで、そんなに自信満々なの……っ」


いつも、私を救ってくれる。

心が落ちついて、私が私でいられる。


まるで私を変えてくれる、ヒーローみたいで。


「ん?だって、むぎが好きだから。

むぎがかわいく見えてしょうがないから。
むぎを押し倒したくて……」


「ああっ!!
も、もういいから!」


ほら、また。

私が泣いてる理由も、無理に聞いてこない。


いつも通りに接してくれる。

ただやわらかいまなざしで見つめてくるだけ。


いつもいつも、その優しさに救われる度に、

胸が張り裂けそうなくらい、渚が好きでたまらなくなる。


「かわいいなぁ、むぎ。
ほんとに、かわいい」


「ううっ……」


狙って言ってるんじゃなくて、

ポロッと落ちてしまったみたいな言い方に、反論できない。


かわいい、かわいいって。


甘すぎる渚に身も心もパンクしちゃう。


うつむこうにも、後頭部に手が回ってるから、離れられなくて。

その手が離さないって言ってる。


「むぎ。
俺はむぎが好き。
俺の彼女になってくれる?」


「っ、うん……っ。
私も……渚が、」


「俺が?」


「すき……っ。
私の彼氏に、なってくれる……?」