「つーかさ、キスがうまくなりたいって、なにそのかわいーの」
「っ、は、か、かわいい……?」
「うん。男として、彼女にキスがうまいって言われるってこれ以上にないくらいの褒め言葉だけど、それで自分も、って、どんだけ俺を好きにさせたら気が済むの」
「っ、ん、えっ……?」
キスをされながらの会話なんて、正直頭に入ってこない。
でも渚はそれくらい今、私にキスしたいって、私を求めてくれてるんだって思ったら、どうしようもなく胸が鳴る。
「俺、むぎに満足してないとか、うまくなってほしいとか、そんなこと、この先一生思わないよ」
「いっ、一生って……」
そんなの、わかんない……。
「わかるよ。だって俺、むぎのぜんぶが俺のタイプだから」
「え……?」
最後にちゅっと、軽いキスが落とされたあとで、ゆっくり頬をなでられる。
「前にも言ったと思うけど、むぎは俺の理想の塊。俺のドタイプ。付き合う前も今も、いくらふれて、キスしたって、それはこの先ずっと変わらない」
そっと私の左手をとって、夕日に輝くそれに口づける。
「俺と付き合う中で無理とか、がんばろうとかしなくていいから。俺はいつもむぎと並んでいたし、隣にいたい」
「うん……」
私また、勘違いしてた。
渚は、こういう人だった。
私は私のまま、ありのままでいいんだって。
「けどさ……」
「ん、なに……ひゃっ、あっ……」
「キスうまくなりたいなら、俺に言ってくれればいいのに」



