ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「それで、さくらんぼ買ってきたんだ?」

「はい……」


それからごはんもそっちのけで、事情聴取。

さくらんぼを食べてる理由はもちろん、買いに行った理由。

音ちゃんたちから聞いたこともすべて。


「へえ?」

「な、なに?」


話すたびに、みるみるうちに口角が上がっていく渚。

こ、こんな笑顔の渚、お互いが両思いだって分かったとき以上なんだけど……。


「じゃあさ、俺も一個いい?」

「えっ、一個って……」


まさか、渚もやるの?

キッチンに行ってさくらんぼを一つ持ってきたと思ったら、ソファーで腰かける私の横に座る。


「俺もできるかわかんないけど、」


そう言ってポンと口に入れて、もぐもぐ口を動かして5秒。


「できた」

「えっ!?はやっ!!」


どう?

そう言って見せられたのは、なんと……。


「り、リボン結び!?」

「俺、才能あるかも」


才能あるどころの話じゃない……ふつうに結ぶならまだしも、リボン結びって聞いたことないんですけど!?


「むぎ」

「えっ、な、なに……!?」


トンっと肩を押されて、気づいたら私の背中にはソファーの座面、そして視界は天井と渚のドアップ。


「な、渚……?」


「んー?」


「えっと、ど、どいて?」


「やだ」


「なんで!?」


「ん?今日はここで特訓するから」