ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「俺に隠しごとするわるい子だーれだ。
ほら、あーんして」


「あっ……」


最悪……!

斜め上からあごを持ち上げられたら、もう隠しようがない……!


「んー?なに、これ……え、まじでなに食べてんの」


「うっ、これは……」


さくらんぼです=なんで、茎?=結べるようにするため=キスを上達させるため。


もうこの流れしか思いつかない!


「言わないと……」

「ひゃあっ……」


「キッチンで立ったまま、むぎの弱いとこ、さわるけどいーの?」


「うっ、あ……」


私の弱いとこ。


「ほら、もう手、簡単に入っちゃうよ」

「ふえっ、なぎ、さ……」


「声あっま……な、まだがんばる?」


するりとシャツにすべりこんできた熱い手。

お腹から腰をたどって、脇腹に行きつく。


「て、手、ぬいて……っ」

「そんな甘い声出して、俺がやめられると思う?
煽ってるようにしか聞こえねーんだけど」


く、口調が……。


「言わないなら、ここで腰砕けるまで昨日みたいにキスしてもいいんだけど?」

「ふっ、ぅ……」


耳の輪郭をなぞるようにして伝う熱いそれ。

も、もう……っ!


「言う!言うから!」


「ん、じゃあ、教えて?」


「やっ、やめないの……っ?」


「むぎが言うまではやめない」


「ううっ……い、いじわる、」


「けどそんな俺も好きじゃねーの?」


ああ言えばこういう。

あーっ、もう、耳あつい!

もう、もう……っ!


「さくらんぼだよ!」


「なんで茎食べてんの?」


「っ、うぐぅ、それは……」


「それは?」


あ、これぜったいわかってる。

わかってるけど、言わせたいやつ。


やっと耳から離れてくれたと思ったら、ぶつかったのは三日月形の瞳。


はぁ……もう。


「渚みたく、キス、うまくなりたかったからです……」