ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



そう、今香澄ちゃんの言った通り。


私はいつも渚にされてばかりで、受け身状態。

自分からすることもあるけれど、あんな深……うん、あーいうのしたことないし、してるときはいつもいっぱいいっぱいで。


力抜いて、とか。

舌出して、とか。


渚に教えてもらって、言われるがまま。

渚にキスされたら、いつも頭も体もぜんぶがとけてなくなってしまいそうなくらい。


ぼーっとして、目もうるんで。

全身が熱くなって。


体質の症状とはちがう。


渚のキスがうますぎて、いつも力が抜けてしまうだけ。


「別に女の子はそんなこと、気にしなくていいと思うけどなー」


「え?」


「確かに満足させてあげられてるかな、とか、受け身だし、とか、思うのかもしんないけど、それってぜんぶ自分の主観じゃん?」


ピッと人差し指を立てて話す香澄ちゃん。

た、たしかに言われてみれば……。


「香澄の言う通り。大事なのは、久遠くんがそう思っているか、どうか。もしそう思ってるなら、ぜったい言うはずだよ」


むぎちゃんには、ぜったいね。


「音ちゃん……」


そうだ。渚なら、ぜったいぜんぶ教えてくれる。

私に隠しごとはぜったいしたくないし、ぜんぶ知ってほしいって言ってたから。


「でもまあ、あのクールさでキスもうまいだなんて……妄想、捗るわぁ」


「「ごちそうさまです☆」」


なんて、音ちゃんと香澄ちゃんに敬礼をされてしまった。

よくよく考えれば、なんてはずかしい相談……。

しかも同時に3人に……軽く死ねる。


「でも、どうしてもむぎちゃんもキスがうまくなりたいって言うんなら……試しにアレ、してみればいいんじゃない?」


「あれ?」


「それ、いいかも!うまくなるかどうかはわかんないけど、自分がうまいかどうかはわかるよね!」


あれ?あれって、なに?


手を取り合って、ランランと目を輝かせるふたりに首をかしげる。


「な、那咲、わかる?
あれって」


「ご、ごめん、あたしもわかんない……」


というか、那咲……今ずっと黙ってなかった?


「那咲、その見た目でピュアっピュアなの、ほんとにいいと思うよ!」

「天然小悪魔ってやつね。あたし、嫌いじゃないわ」


「え?は?ふたりしてどうしたの?」


音ちゃん、香澄ちゃん。

それは私も同感です……。


それから私は真っ赤になりながらも、聞いた。

自分のキスがうまくなる方法……。