ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「かわい、」

「っ……」


「ほんとにかわいい。
まじでかわいい。大好き」


「もう、やめ……」


「むぎは?
俺のこと、どう思ってる?」


コツンとおでこがぶつかって、のぞきこんできた瞳は見たことないくらい真剣なのに。

背中に回った手のくすぐったさに。


「っ、あ……」


言いたいのに、言えない。

言葉にしたいのに、体が言うことを聞かない。


ただ、唇を噛みしめて、耐えて我慢して。


ずっとずっと、渚が好きだった。

ただの幼なじみだなんて思ったことない。


私が渚を好きなように、渚も私を好きだったら。


何度。

何度夢に見たことか。


それが現実になった今、渚に応えたいのに。



「むぎは俺と同じ気持ちだと思うけど、ちがう?」


「っ、な、なんでっ、知って……」


なんとか絞り出した声は掠れていた。


けれど、ゆっくりでいいよ、とでも言うように、渚は語りかけるように聞いてきた。


「知ってるよ。
だれよりもそばにいて、ずっと見てたから」


「っ……なぎ、」


「むぎ。
俺のこと、好きだろ」