瞬間。
「やっ、」
「むぎ?」
今まで見たことないくらい
目を細めて幸せだと笑うその顔に、
胸がきゅううってなって、
ますます体が震える。
「大丈夫か?」
あ……。
だめ、これ。
「下ろし、て……っ」
「なに?」
「も、や……っ」
「だめだよ。
絶対離さない」
甘くほほ笑む顔と、息をするたびに肺に流れ込んでくるシトラスの香りに、頭もくらくらして。
「なぎ、さ……」
「うん?」
ほんとに、だめなのに……っ。
その気持ちを込めて、ぎゅっと渚のシャツを掴む。
「やば」
潤む視界の向こうで、その顔がくしゃって歪んだ気がした。
「えっろい顔……」
「え……?」
「そんなとけた顔して。
離してもらえると思ってる?」
「っ、なぎ……」
「むぎの気持ち、聞かせて」
ますます私を抱き寄せて、足早に階段をのぼり始める。
「ま、まって、なぎさ……」
「待たない。
どれだけ待ったと思ってんの」
少し乱暴に開けられたドアは、すぐに閉められて。
「もうっ、なぎ……!」
「ごめん、余裕ない」
ベッドを背にする形で、渚はラグの上に座った。



