ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


それからふたりで屋上に向かうと。


「そうなんでしょ?」

「だからちがうって!」


土方くんと、那咲。

ふたりがお昼そっちのけで盛り上がってた。


「遅かったわねえ。なんかしてた?」

「してた。それはもう、むぎが積極……」


「ちょっ、渚!いらないこと言わなくていいから!」

「他校なのに、まじでむぎに溺れそうになった」


「っ、もう、黙ってって!」


さっきまであんなに表情豊かだったのにどうしたの!?

急にクールに戻ってしまった渚に、どうやって切り替えてるの?って叫びたくなる。


「いいなぁ、おまえら……オレも青春してえ」


「ど、どうしたの、土方くん。
そんなげっそりした顔して」


「そうなんだよー!聞いてくれよ星見!まじで違うって言ってんのに、森山わかってくれねーの!」

「おい、近い」


泣きそうな顔で、ぐっと顔を近づけてきた土方くんと間に、渚が怖い顔で割って入る。


「いやー、土方がまさか、花柳女子とフォークダンスとか思ってもみなかったわ、とか複雑そうに言うから、内心めちゃくちゃ嬉しいんじゃないの?って」


「……」

「……」


う、わー。

そ、れ、は……。


落ちこむ土方くんに、那咲の厳しいひとこと。


「なんで落ちこんでんのかぜんぜんわかんないんだけどさ、真面目な話、ほんとは嬉しいんじゃないの?」


「だから、なんで」


「だってうち、かわいい子たちいっぱいいるし。土方女の子大好きだし」


「はああ!?」
オレがいつ女の子大好きって言った!?」

「うるっさ!急になによ!?」


ズーンとうつむいていたけれど、ガバッと顔をあげた土方くん。

その目はこれでもかと見開かれていて、若干、こわ……うん。