ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「な、なぎさ……っ」

「ん。そのまま俺の首に手、まわしてて」


「っ〜〜」


っ、やだ……っ。


密着してるせいか、ビクンと体が震えてしまう。


「大丈夫だよ。
そのまま、」


けど渚は、私が怖がっていると思ってるみたいで、もっと体を引き寄せて。


ちがう、けど……、

そうじゃないなんて、言えない。

言えるわけない。


自分から抱きついたくせに、今更離れて、なんて。


ちがう。

今は症状とか、そんなことよりも。


はなれたくない。

好きな人の、渚の腕の中にいることを実感したい。


「いいこ。
上手だよ」


ふわふわと頭をなでた手が、

背中、腰へと落ちて。


「むぎ」


どんなスイーツよりもドロドロ甘い声が。


「顔、見たい」


どんな濃厚な蜜よりも甘ったるい瞳が。

ふれる手が。



「好きだよ」


「むぎのことがめちゃくちゃ好き。
小さいときからずっと好きだった」


─────私のすべてを溶かしてしまう。