「ってことで……」


「うっ、あっ……」


「めいっぱい甘やかしてあげる」


「待って……!」


ぎゅっと絡められた手がシーツに押しつけられて。

寝起きで乱れた髪からのぞく瞳が熱っぽくて、ぞくりとする。


「じ、時間!学校、遅刻しちゃうから!」


「いつも起きる時間よりまだ30分以上早いから、大丈夫」


「そ、それでも……っ」


「昨日の夜できなかった分、いっぱいイチャイチャしような」


「ううっ……」


もう……っ。

伏せられたまつげが近づいて、私もふっと目を閉じようとしたとき。


ブーッブーッ。


「っ、なに……っ、ふ、」

「ん……むぎ、かわいい」


なにかが震える音がしてすぐ、そっと唇を塞がれた。


ブーッブーッ。


「っ、ぁ……な、ぎ、」

「ん……すきだよ、すげえ好き」


ブーッブーッ。

渚の甘い声、水音。

いつもならすぐにいっぱいいっぱいになるそれが気にならないほど、今の私の頭には。


「なぎっ、さ……」


「ん……なに?」


「っ、あ……でん、わ、」


「電話?」


唇が離れた一瞬の隙をついて、なんとか潤んだ目で渚を見上げる。


「ったく、だれだよ、こんなに朝早く……」


まだ時間も早いし、急用だと思ったんだと思う。


「ごめんな、ちょっと待ってて」

「っ……」


ふわっと前髪をかきあげられたあと、そっとおでこに降ってきたキスにビクッとすれば、


「目、とろんってしてる。かわいい。
終わったらまたすぐにいっぱいキスしような」

「ん……」


頭、ぼーっとする。


なんか、渚にキスされるといつもこうなっちゃう。


全身に毒がまわって痺れるみたいな……。


そんなぼんやりした私の頭を優しくなでたまま、渚は枕元にあったスマホを手にとる。


「むぎのスマホ……森山からだけど、出れそう?」


フルフル。


「ん、俺が出るな?……もしもし?」