ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「渚くん。
私今から買い物行ってくるから、むぎのこと、お願いしていいかしら?」


「もちろんです」


「えっ、ちょっ、お母さ……」


「あとは若いふたりで、ごゆっくり!
ささっ、汐に報告報告〜!」


いろんな意味で汗だくの私の前で、スキップしながら出ていったお母さん。


買い物って……。

さっき行ってきたんじゃないの!?


だけど口をパクパクさせるしかできないから、そんなこと、言えるはずもなくて。


「むぎ」


「っ……」


「部屋行こ」


「え……きゃあっ!?」


ふわっと持ち上げられたと思ったら、いつの間にかお姫様だっこされてて。


「な、渚……っ、これ、怖い……っ」


渚の目線が結構高くて、思わずぎゅっと首に抱きつく。


「っ、かわいい……、」

「え……?」


今、なんて……。


「むぎ、すっげえかわいい」


「ひゃぁ……っ、」


ふわっとおでこにキスが落ちてきて、ビクッとしてしまう。