「なっ!?
しっ、ししし、知ってたの!?」
「あったりまえよ!
いつまでも意地っ張りなむぎに、どれだけ地団駄踏んだことか!」
ヤレヤレとため息をついたお母さんの前で、わなわな震える。
ぎゅっと握りしめた手の中は汗が滲んで、体中が沸騰してるみたいに熱い。
「今更なにはずかしがってるのよ」
だれのっ!せいでっ!
「まあ、いいわ。
せっかくのチャンスあげたんだから、自分の気持ち、ちゃんと伝えなさいよ」
「え?
チャンスって……」
どういう意味?
瞬間。
ガチャッ。
「っ!?」
リビングのドアが開いて、固まる私の前にゆっくりゆっくり歩いてきたのは。
「むぎ。
今の話、ほんと?」
もちろん、渚しかいない。



