ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「えっと……」


「いいにきまってるじゃなーい!
渚くん、先に部屋行ってて?
むぎ、あんたはちょっとリビングに来なさい」


「なんで!?」


「いいから」


なんで私には怒り気味!?


「渚くん、ほんとにかっこよくなって〜!
また身長伸びたんじゃない?」


「今180ちょっとくらいです」


「きゃー!
もう、うちのお父さんと交換してほしいわ〜!」


「ちょっ、お母さ……」


バタンと閉まったドアの前でポツンと佇む私。


最悪だ……。


最近うちの親は仕事で朝も早いし、夜も遅いから一緒に登下校してるとこなんて、ほとんど見られてなかった。


さすがに高校生にもなると、いくら家族ぐるみで付き合いがあるとはいえ、やっぱり親に見られるのははずかしいのに。


けどお父さんもお母さんも、渚と一緒にいると、ああやって、いっつもニヤニヤニヤニヤ。


エンドレスニヤニヤ。


渚がお気に入りなのは分かるけど、そんな楽しそうな目で見られるとほんとにはずかしい……。


お母さんが怒る理由もわかんないけど、

そもそも渚、なんでさっき喜んでたの……?