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「おいしかった……毎日自炊してたら、こんなにうまくなれるんだ……」


「ふたりで作ったからだよ。俺1人だったらこんなにおいしくなんない」


毎日自炊してる人に言われても説得力ないんですけど……。

それからなんとか作り終えたメニューは、なんとも簡単にできるオムライス。


『早くむぎにふれたいから、ごめん。
今日は短縮させて』


なんて爆弾発言に固まってるうちに、気づけば渚がパパっと作ってしまった。

私が手伝った記憶は……ない。


オムライスって、こんなに早くできるものだっけ……。


そんなに私と早く……っ〜、だめだ。


渚の目、見てられない。

ふつうに笑って会話してるのに。


その目の奥が、早くふれたくてたまらないって、見ているだけでとけそうなくらいの熱を帯びているのはもうずっと。


ふだんあんなにクールで、あんなに涼し気な表情の渚を、私が乱してる。

そう思ったら。


「っ……」

「どうかした?」

「なんでも、ない……っ」


お腹の奥底が変に熱くなって。


「顔赤いけど、平気?」


渚にふれたい。

ふれてほしい。

我慢させてたのは自分なのに。


「へい、き……っ、」


いろんな感情が絡み合って、

1人で勝手に欲情してる自分に、はずかしくてぶわっと全身が熱くなる。


「ほんとに?体調わるいとかじゃない?」

「大丈、夫……」


「むぎはいつも我慢するから心配。
ちょっと、さわるな?」


っ、あ……。

コツンとぶつかったおでこに、机の下の手の中にじんわり汗が滲んで。

反応しちゃ、だめだ……っ。


体の奥底から熱い何かが込み上げてきそうになって、こらえるようにぎゅっと強く握りしめる。


「ん、顔赤いだけで熱はないな。軽い熱中症かもしんないし、寝室には水とかペットボトル持っていこうな?」


「っ、うん……」


おでこは離れたけれど、ふわふわ髪をなでてくれる手はそのまま。

体が、熱い……っ。


「じゃあ、ご飯も済んだし……」


っ!!

─────隠しきれてない熱と、瞳が、ぶつかる。