ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。



「っ、も、もう!
早くしないと広告の品売り切れちゃうから!」

「だから、離れんなって」


そう思って走り出そうとしたけれど、渚の腕に逆戻り。


さわるのだけはやめてって!


「そんなに早く買い物終わらせて俺とイチャイチャしたいんだ?俺も早く帰って、むぎと甘い時間過ごしたい」


「誰もそんなこと言ってないよ!」


「そんな真っ赤な顔して言われても、そうだって認めてるようたもんだって。よし、じゃあ今日は作らないやつ……」


「それはだめ」


たまにならいいかもだけど、なるべく時間があるときはちゃんと一から作らなきゃ。


体に悪いよ。


「俺の奥さん、かわいすぎるし、優しすぎるし、デレたときやばいし、最高すぎじゃね」


「……もう、ちょっと黙って」


なんていいかげん暴走寸前の渚をなんとか抑えて、惣菜売り場の前をウロウロしていたら。


「こんにちは〜!
よかったら、お一ついかがですか?」


冷凍食品のすぐそばで試食コーナーをしていた30代くらいのお姉さんが笑顔で話しかけてきた。


「これ、お弁当にどうですか?」


よく見れば、渚の好きなハンバーグ。


見た目はあんなにクールなのに、実際は子供っぽい食べ物が好きなんだよなぁ……。


うちのお母さんが作ったハンバーグ、よく喜んで食べてたっけ……。


「「いただきます」」


「ん、おいしいです」

「ほんとだ……」


冷凍食品とは思えないほど肉汁がすごい。

野菜と入ってるし、結構イイかも。


「渚ハンバーグ好きだし、お弁当に入れようか?」


「お弁当、作ってくれんの?」


「うん……渚が嫌じゃなければ、だけど、」