ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


「うわぁ、めちゃめちゃたくさん人いる……」


それからやってきたショッピングモール。


駅前なのとアンド日曜日のせいか、どのお店もたくさんの人で溢れ返ってる。


「むぎ」

「えーと?これ、は……?」


お店に入ろうとした途端、スっと横から腕を出された。


「腕、組んで」


「ええっ!?」


立ち止まって固まる私の横を物珍しそうに人が通り過ぎていく。


「い、いいよ、べつにはぐれたりしないから。
大丈……」


というか、少し慣れたとはいえ、まだ体を寄せ合うことにくすぐったいのは確かだから。

ふつうでいられる気がしない……。


もしかして、迷子になるとか思ってる……?


「そうじゃなくて」


「うわっ、ちょっ、渚!?」


ううっ……息がっ……!


グッと肩に手を回されて、引き寄せられる。


「さっきからいろんな男がむぎのこと見てる。見てるやつ全員シバキ倒したい」


「べ、べつに私なんか……」


それを言うなら、私じゃなくて、渚の方なのでは……?


さっきからチラチラ女の子たちに見られてるよ。


白Tシャツに、黒のスキニー。

パッと見ふつうの格好なのに、渚が着ると一気にモデルに早変わり。


身長も高いし、顔も小さいからモデルさんみたい。
ピアスもしてるから、シンプルだけど本当にかっこよくて……。


買い物だけだし。

そう思って私もTシャツにデニムってふつうの格好なのに、なんなのこの差……。


というか、家ならまだ大丈夫だけど、外はまだだめ……!

また体熱くなるから……っ。


「他の女なんて、みんな石」


「い、石?」


「そう。どーでもいいってこと。俺にとって、生まれたときからこの世で女の子はむぎ1人だけだから、ほんとは視界にも入れたくない」


「そ、そう……」


「つーか、見られてるのはむぎの方だからな」


「だから違うって」


「違わねーよ。なに着てもどんな格好でも似合うし、かわいいし。そんなむぎが笑ってる姿なんか見たら誰だってイチコロなんだよ」


「っ、そ、それは」


「ん?」


「渚も、その……イチコロ、なの?」


「そうだな。
骨抜きにされそうなくらい、惚れてる」


「なっ!?」


けど、むぎもだろ?

なんてニッと笑うその顔に、反論できない自分。


「あ、やっぱ訂正。骨抜きにされそうなくらい、じゃなくて、もうされてる」


〜〜!!