ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。

***


「ごちそうさまでした」

「お粗末さまです」


時刻はお昼すぎ。


「とりあえず、買い物行ってこなきゃだね」


「そうだな。家にあるの、卵と牛乳とパンしかないし」


さすがにホテルにスーパーはない。


でも歩いてすぐのところに、ショッピングモールがあって、大きいスーパーも入ってるから、そこに行こうかな。


「ちなみにだけど、今日の夜ごはんリクエストある?」


「俺が作る」


「やだ。さっき作ってもらったし、今度は私が作りたい」


「絶対に俺が作るって言っても?」


「いくら渚でもこれだけは絶対に譲らない!」


渚はぜんぶ自分がやってあげたいって言ってくれたけれど、夫婦はふたりで一つだもん。


旦那さんだけにすべてを任せるなんて、妻失格だよ!

せめてふたりで協力し合いたいから。


「なら、ふたりで作る?」

「えっ!」


「夢だったんだよな。むぎとふたりでキッチン立つの。めちゃめちゃ新婚っぽいし」


「っ……で、なにが食べたいの!?」


「ふっ、照れてる照れてる」


「照れてない!」


「かわいい。
そうだな、やっぱ精がつくものがいいよな」


精がつくもの?


「なんで?」


「んー、今日の夜に向けて体力つけとかなきゃ、じゃん?」


「は?」


夜?体力?


「それってどういう……」


「あ。むぎの好きなレモンティーは絶対買お。これもカフェイン入ってるから眠気ざましになる
し」

「眠気覚まし?」


さっきから言ってる意味が分からな……。


「うん。だって、寝かさないよ状態にできるから」

「はあっ!?」


ニッと口角をあげた渚に、ぶわっと全身が熱くなって、さっき渚に秘密にしたことを思い出してしまう。


「だって、むぎから好きって言ってもらわなきゃ俺寝れないし」


「そこなの!?そんなの、今言う……」


「お、ほんと?
言ってくれる?」


ぐっ……!